この記事は、当社が台湾向けに書いた記事を、日本の LINE 公式アカウントの仕様に合わせて書き直したものです。LINE 公式アカウントの機能と料金は、2026年10月時点の LINEヤフーの公式ヘルプと発表をもとにしています。最新の条件は管理画面と公式ヘルプでご確認ください。
キーワード応答が足りなくなる理由
LINE 公式アカウントのキーワード応答(管理画面の「応答メッセージ」)は、キーワードの対応表です。「営業時間」と設定したら、お客様も「営業時間」と打たないと返事をしません。
お客様が「何時まで開いてますか?」と打つと、どのキーワードにも一致せず、何も返りません。そこで「何時」「閉店」「やってますか」と足していき、数か月後には数十個のキーワードが並びます。それでも、お客様は設定していない言い方で聞いてきます。
設定の仕方が悪いのではなく、もともとそういう道具です。
※ このガイドの別の記事で「応答メッセージ」と書いている箇所は、Messaging API で返信するメッセージの種類(通数にカウントされない返信)のことです。ここでの「応答メッセージ」は管理画面のキーワード応答機能を指します。
先に試すもの:AIチャットボット(β)
LINE 公式アカウントには、2025年11月から AIチャットボット(β) があります。あらかじめ登録した Q&A の中から、お客様のメッセージに合う回答を AI が選んで自動で返信する機能です。Q&A は手で登録するほか、企画書などの PDF や画像から AI に作らせることもできます。開発も外部システムとの連携も要りません。
公式ヘルプと発表に書かれている条件は次のとおりです。
- 実際にお客様へ返信するには チャットProオプション(月額3,000円・税別) が必要。Q&A の作成と応答テストは購入前でもできる
- 名前のとおりベータ版
- 医療・福祉、金融、宗教、政治・行政、法律に関わる業種は、オプションを購入しても使えない場合がある(対象業種は予告なく変わることがある)
- キーワード応答と併用でき、キーワードに一致したときはキーワード応答が優先される。営業時間に応じて応答方法を切り替えることもできる
飲食・小売・美容のように、聞かれることの多くが営業時間、料金、場所、空き状況といった内容なら、まず1か月これを試すようにおすすめしてください。月3,000円は、どの受託開発の見積もりよりも安く済みます。
5つのサイン:AIチャットボット(β)でも足りない
サイン1:答えにリアルタイムのデータが要る
「土曜の午後、まだ空いてますか?」「先週注文した分、もう発送されましたか?」「この服、M サイズありますか?」
こうした質問の答えは Q&A にはなく、予約表、注文システム、在庫の中にあり、しかも刻々と変わります。資料をアップロードしても解決しません。システムに問い合わせる処理が必要です。
サイン2:答えをルールで判断する必要がある
「買って10日、開封済みでも返品できますか?」「大人2人と子ども1人だと、どのプランですか?」
答えは一行の文章を探せば済むものではなく、返品規定や料金規定に当てはめて出すものです。ルールが細かいほど、AI に推測させるのではなく、判断をプログラムとして書く必要があります。
サイン3:有人対応に切り替え、それまでの会話を引き継ぎたい
AI が答えられないとき、またはお客様がどうしても人と話したいときがあります。そのときはボットが黙って担当者に会話を渡し、担当者がそれまでのやり取りを見られる必要があります。そうでないと、お客様は最初から説明し直すことになります。
AIチャットボット(β)の公式ヘルプと発表には、有人対応への切り替えの流れについての記載が見当たりません(営業時間外だけ AI に答えさせる設定はできます)。有人への引き継ぎが重要な案件では、先に確認してください。
サイン4:業種が対象外になっている
クリニック、美容医療、保険、法律事務所などは、AIチャットボット(β)を使えない可能性があると公式に書かれています。その場合、残る選択肢はキーワード応答と受託開発の2つです。
サイン5:Web サイトにも答えるチャットが欲しい
お客様は LINE だけでなく、Web サイトからも質問します。LINE と Web で別々に設定すると、情報を1回変えるたびに2か所を直すことになり、いずれどちらかが古くなります。
受託開発なら、1つのナレッジベースを LINE と Web で共有し、1回の更新で両方に反映できます。
3つの選択肢を並べると
| キーワード応答 | AIチャットボット(β) | 受託開発の AI チャットボット | |
|---|---|---|---|
| 費用 | 追加費用なし | チャットProオプション 月額3,000円(税別) | 開発25万円〜(税別)+月々の AI 利用料 |
| 言い方が変わっても答えられる | ✗ | ✓ | ✓ |
| リアルタイムのデータ(空き枠・注文・在庫) | ✗ | ✗ | ✓ |
| 店舗のルールで判断する | ✗ | 限定的 | ✓ |
| 有人対応への切り替えと会話の引き継ぎ | 手動 | 公式ヘルプに記載なし | ✓ |
| 医療・金融などの業種 | ✓ | 使えない場合あり | ✓ |
| Web サイトと共通のナレッジ | ✗ | ✗ | ✓ |
| 使い始めるまで | 当日 | 当日 | 3〜5週間 |
表の料金は LINE 公式アカウントの月額プランとは別です。プランの料金は、どの選択肢でもクライアント様が LINE に支払います。
当社に依頼しなくていいとき
- 聞かれることが10種類未満で、答えが決まっている:キーワード応答とリッチメニューで十分です。よくある質問をメニューのボタンにして、お客様にタップしてもらいます
- 質問は多いが、どれも資料を見れば答えられ、判断は要らない:AIチャットボット(β)を使ってください
- 友だちが数百人で、メッセージが1日10件未満:人が返すのがいちばん早いです。ボットで浮く時間は、開発費に見合いません
こうした案件で受託開発を入れても、費用に見合う改善はあまり見込めません。
実例
台湾の電動アシスト自転車レンタル店の LINE 対応を作りました。スタッフは一日中店頭で自転車の対応をしていて、LINE を返す時間がありません。お客様が聞くのはいつも同じ、料金、車種、公道を走れるか、予約の方法です。返事が遅いと、お客様は離れていきます。
当てはまったのはサイン1とサイン3です。予約にはリアルタイムのデータが要り、スタッフが対応すべき質問は担当者に渡し、それまでのやり取りも見られる必要がありました。いまはよくある質問を AI が答え、人が必要なときはスタッフに切り替え、それまでの会話も一緒に渡しています。詳しくは事例ページに書きました。
当社サイトの AI チャット(中国語)も同じ考え方で作っています。2026年10月1日までの90日間で81件に返信し、そのうち約35%は「確かではないので、担当者におつなぎします」という返事でした。調べても分からないことには答えない、という設計です(数字には当社のテストの会話も含みます)。
よくある質問
キーワード応答と AIチャットボット(β)は同時に使えますか?
公式ヘルプによると併用できます。キーワードに一致した場合はキーワード応答が優先され、AIチャットボット(β)は返信しません。実務では、いちばん多い質問をリッチメニューのボタンにして、自由に打たれた質問を AI に任せる形をおすすめします。
お客様に、人が返していると思われませんか?
あいさつメッセージで「これは自動応答です。担当者と話したい方は下のボタンを押してください」と先に伝えるのがおすすめです。当社の経験では、最初からボットだと分かっているほうが、答えられなかったときもお客様は寛容です。
受託開発の場合、毎月の費用はどうなりますか?
3つに分かれます。LINE 公式アカウントのプラン料金はクライアント様から LINE へ直接、AI の利用料はメッセージ量に応じて(上限はシステム側で固定)、保守は任意です。AI の利用料を誰が払うかの考え方は、本番運用で分かった14の落とし穴の4項目めにまとめました。