userId は「プロバイダーごと」に違う
LINE Developers では、まずプロバイダー(サービスの提供者を表す単位)を作り、その下に Messaging API などのチャネルを作ります。公式アカウントで Messaging API を有効にすると、どのプロバイダーに属するかを選ぶことになります。
Webhook でお客様のメッセージを受け取ると、送り主を表す userId が届きます。この userId は、同じ人でもプロバイダーが違えば別の値になります。同じプロバイダーの下のチャネル同士であれば同じ値です。
つまり userId は、「この人」を表す世界共通の番号ではなく、「このプロバイダーから見たこの人」を表す番号です。
開発会社のプロバイダーで作ると、何が起きるか
開発会社が自社のプロバイダーで Messaging API を作り、システムを納めたとします。数年後、クライアント様が別の会社に乗り換えると、次のことが起きます。
- 新しいシステムが受け取る userId が、以前のデータベースの userId と一致しない
- タグ、セグメント、会話の記録、予約履歴が、前の会社のデータベースと紐づいたまま残る
- 「この友だちは誰か」を新しいシステムでつなぎ直す必要がある
友だちの数そのものは公式アカウントに残りますが、システムが持っていた「その人についての情報」が引き継げなくなります。CRM 連携や会員データとの紐づけをしている案件ほど影響が大きくなります。
当社は台湾で、SaaS から乗り換える案件を引き継いだことがあります。そのときは契約前に、アカウントの移管ができない場合の名簿の再構築を別見積もりにすること、タグのデータを解約前に CSV で書き出してもらうこと、稼働時に既存の友だちにもう一度流れを通ってもらうことを、契約書に書きました。
代理店が案件の最初に決めること
| 項目 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 公式アカウントの名義 | エンドクライアント様 | アカウントと友だちは事業者のもの。代理店の解約でアカウントごと失わない |
| プロバイダー | エンドクライアント様の名義で作成 | userId がプロバイダー単位のため。将来の乗り換えでもデータを引き継げる |
| 代理店・開発会社の権限 | 管理者として招待 | 作業に必要な権限だけを持ち、解約時に外せる |
| AI の API アカウント | エンドクライアント様 | 請求が直接届き、開発会社を変えても使い続けられる |
| サーバーと DB | エンドクライアント様または代理店 | 納品物としてソースコードと DB を受け取る |
すでに開発会社のプロバイダーで作ってしまった場合
まず、今どのプロバイダーに属しているかを LINE Developers コンソールで確認します。そのうえで、乗り換えの前に次の準備をしておくと、影響を小さくできます。
- タグや属性など、システム側にある友だちの情報を解約前に書き出してもらう
- 新しいシステムでは、電話番号や会員番号など userId 以外の情報で本人を確認し直す流れを用意する
- 既存の友だちに、もう一度登録の流れを通ってもらう案内を出す
プロバイダーの移管については、条件や手続きが LINE ヤフーの規定に依存するため、最新の公式ドキュメントで確認してください。
見積もりの前に、この1行を
代理店からエンドクライアント様への提案書や見積書に、「公式アカウントと Messaging API はお客様名義・お客様のプロバイダーで作成します」と1行入れておくだけで、数年後のトラブルを防げます。開発会社に依頼するときも、最初にこの条件を伝えてください。当社はこの形を標準にしています。
LINE Developers の画面や用語は変わることがあります。この記事は2026年10月時点の仕様に基づいています。